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2017.07.07ブランディングとネーミング

去る日の夕刊に出ていた広告。「物忘れの改善に。キオグッド顆粒。」一瞬、「おっ、小林製薬。また、新製品出したのか?」と思って、よく見ると何と森下仁丹の通販広告ではないですか。何で小林製薬の広告と勘違いしたかというと、おわかりのようにその「面白ネーミング」が原因です。「記憶力が良くなる→キオグッド」分かりやすく、覚えやすい、いいネーミングだと思います。(薬事法的にも大丈夫なんでしょうね?)

私が勘違いしたみたいに、今やこういう手法のネーミングは小林製薬の独壇場になっていると思います。「熱さまシート」「ナイシトール」「トイレその後に」など簡潔に製品特性や効能効果を言い当てたネーミング戦略そのものが小林製薬のブランディングと言っても良いくらい周知されています。

ところで、小林製薬のこうしたネーミング戦略。比較的最近開始されたかのように思われている向きもあるようですが、それは誤解で、例えば同社の代表的芳香消臭剤である「サワデー」。これは「爽やかな日(day)」という日本語と英語を合成した優れたネーミングである訳ですが、この商品の発売は1975年。42年以上親しまれているロングライフ製品です。もっと遡れば1939年に頭痛薬「ハッキリ」を発売しています。これなどは当時としては相当斬新なネーミングだったのではないでしょうか。

実はこうした「面白ネーミング」。小林製薬のお家芸という訳ではありません。

頭痛薬では古くから「ノーシン」(荒川長太郎合名会社。現アラクス)という製品がありますが、ネーミングの意味は「脳がシーンとする」だそうです。風邪薬にも秀逸なのが多いですね。全薬工業の「ジキニン」は「ジキに治って〜」というCMでも記憶に残っていますし、「カコナール」(山之内製薬。現アステラス製薬)の由来は「葛根湯のカコ」と「治るがなまったナール」からだそうです。(なお、私が一番好きな医薬品のネーミングは横山製薬の「イボコロリ」です。)

医薬品だけでなく、様々な商品ネーミングの由来については、田中ひろみ著「商品名の不思議な由来」という本に詳しいので、興味のある方はネットなどでお求めください。

さて、私自身、このネーミング開発という仕事に何十年にもわたって携わっていますが、ネット時代になって、ますますこの仕事の難しさを実感しています。どんな優れたネーミングアイデアを出しても、先行商標が登録されていたり、異業種の使用事例があっては、実際には採用に至りません。ネットでこうした先行事例を調べるのが簡単になったことは便利なのですが、良し悪しではあります。昔はアルバイトを雇って登記簿を調べてもらったり、電話帳を繰ったりしたものです。

昔のことを懐かしがっていてはいけませんね。どんな時代でも人々の印象と記憶に残る、優れた、クリエイティブなネーミングはあるはずです。それを求めてこれからも精進していきます。